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「ゲーム脳」徹底検証
斎藤環氏に聞く ゲーム脳の恐怖3
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「医学博士」は医者じゃない
斎藤 このかたは非常に、立場的に恵まれてないかたなんですよ。
――そうですね、それは感じました。
斎藤 前頭前野の活動低下をちゃんと検証したかったら、さっき言ったPETのほかに、fMRI(機能的磁気共鳴画像装置:functional Magnetic Resonance Imaging)とか、MEG(脳磁界計測装置:magnetoencephalography)なんかがまあ、研究者としては常識的な手段でしょうね。医学部の協力を得られないから、どれもぜんぜん手が届かないんですよ、かわいそうに。
被験者の協力もちゃんと得られてないし、医学部の協力も得られてないし、拙劣な研究環境で、自分で変なマシンを開発して、やらなければならなかったという意味では、たいへんお気の毒なかただなあという感じがしますね。
――なんか、立場的にはちょっと私も似てる気がするんで、共感できなくもないんですよね。医学業界の中心から、かなり離れたところにいて、医学部じゃなくて文理学部の教授じゃないですか。そこらへんの劣等感があるのかなーっていう。
斎藤 劣等感バリバリですよ。だっていきなり「医学博士」って書いてあるんですもん。こんなの、どうでもいい肩書ですよ。「医者かな」と錯覚する人も多かったと思いますが、ま、医者じゃないことははっきりしといたほうがいいと思いますね。これもはっきり言っておきますが、医学博士は誰でもなれるんです。別に医者じゃなくても。
こんな私だって医学博士ですからね。いかに博士号を取りやすいものかってことは、身をもって知ってます。あれは、それなりの研究室に所属して、ある程度まとまった論文書けば、だいたい誰でも取れるんですから。そうとうトンデモな論文であってもね。
“脳神経科学”ったってどういう“脳神経科学”かわかりませんしね。本当はスポーツ教育のほうの人だということで。なんか怪しい学会も立ち上げてますけれども。
――なんか、話を聴いてれば聴いてるほど、なんでこういう本が売れたのか、というかそれ以前に、なんで発売されちゃったのかなっていうのが、不思議ですよね。
斎藤 「なんでこんな本が?」ってのは確かにわからないところもありますけれども、話題を作りたい出版社側の事情と、何らかの利得にあずかりたい著者の事情とがうまくマッチすると、本というのは簡単に出せますからね。
「ひきこもり」なんか典型ですよ。「ひきこもり本」ってそれなりに売れますからね。支援活動してる人のところには出版社が行って、出しませんかと持ちかける。
――中には、ちょっとまずいと感じる本もあるわけですか?
斎藤 いっぱいありますよ、それは。なにか「ゴルフでひきこもりを治す」みたいな趣旨の本があって、方法論自体はまあいいとしても、そのゴルフ治療なるものが噂によれば年間1000万かかると。こういうのは、やっぱりちょっとね。
――うわあ。
斎藤 年間1000万かかるとなったら、いくらひきこもりが治るったって、普通は二の足を踏むんじゃないか。
「反射神経」に関する間違い
――134ページには、「ゲームは反射神経をよくするわけではない」という項目があって、「『反射』の場合には、基本的に大脳皮質は関与していないのです」と書かれてますが、これについてはいかがでしょう?
斎藤 この「反射神経」のくだりも、非常にいかがわしいところですね。
「反射神経が良くなる」と言った場合の「反射」っていうのは、大脳も確実に関与した反射のことを指してます。ところがこの人が言ってる「反射」ってのはね、脊髄(せきずい)反射のことですよ。
脊髄反射に大脳皮質が一切関与していないというのも、半分嘘です。実は脊髄反射に対しても、大脳皮質は、抑制するという意味合いで、関与する場合があるんですよ。だから大脳がやられちゃうと、反射が高進したりするんです。
つまりこの人が言ってるような、大脳皮質に行くか行かないかっていうのは、密には行ってないかもしれないですけど、まったく関与がないってのは明らかに嘘です。それが脊髄反射レベルであったとしても。
「ゲーム脳」に関して言えば、脊髄反射ではありません。脊髄反射というのは、あらかじめ組み込まれた、プリセットされた反射ですから、誰にでもあるわけです。
俗に言う「反射神経」は、明らかに大脳を介した、小脳も関与した、複雑な反射のことですから。
そういえばこの本、小脳のことを全然書いてないのはおかしいですね。運動系のことを言うんだったら、小脳のことを絶対書かなきゃいけないのに。
記憶のことだって、短期記憶と長期記憶しか書いてませんけれども、むしろ小脳系の記憶と、大脳系の記憶の区分について書いてほしいんですけど、そういうことは一切書いてませんね。
ゲーム業界にも後ろめたさがある?
――これほどいかがわしい『ゲーム脳の恐怖』に対して、ゲーム業界が反論しないのが不思議なんですよね。
斎藤 うーん、ひょっとしたらゲーム業界も、何か後ろめたさを感じているんではないかなという気がちょっとするんですよね。
もっと堂々と反論していいんだけども、ゲーム業界もそこらへんに関しては、実は内心、じくじたるものがあるんじゃないかっていう気がするんですよね。あこぎなことをしているという意識がどこかにあるんじゃないんですか、ゲーム業界側にも。
――ああ、なるほど。
斎藤 でもまあ、勢力バランスからいったら、「ゲーム脳」説は、ゲームの売れ行きに、そんなに大した影響は出ないだろうと、僕は思うんです。
――ただ、こういう批判に対して、常に避け続けてきたことが、“ゲームに対して批判的な層”の人々を作ってしまっているんじゃないかな、っていう気がするんですけど。
斎藤 そう思いますね。
まあ、よくある構図ではありますけれども、盛り上がった後は、なかったことになってしまうんじゃないかと思いますけどね。
そういった意味では、すごく話題にはなるんだけども、現実は大して変わんないみたいなことになって。まあ変わんなくて当然ですけどね。
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