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ゲイムマンのコラム

「ゲーム脳」徹底検証
見くびられるテレビゲーム業界

マスメディアを悪者扱いするな!

現在では、ゲーム業界も、またゲームファンも、「『ゲーム脳の恐怖』を大きく取り上げたマスメディアが悪い」という方向で、意見がまとまりつつあるようだ。
『週刊ファミ通』の中で、浜村弘一氏(同誌前編集長・エンターブレイン社長)が、「ゲーム脳という言葉は、勝手にひとり歩きを始めた」と書いたことが影響しているものと思われる。
これについては、浜村氏が森氏に言いくるめられてしまった感がなきにしもあらず。そもそも「ゲーム脳」という言葉を考えて、本のタイトルにしたのは森氏自身であり、最初からひとり歩きするように仕組まれていた行為である。
また、12月13日に放送されたTBS『ニュースの森』で、森氏の「ゲーム脳」「メール脳」を取り上げていたが、この特集企画の中で、森氏は最初から最後まで出ずっぱりだった。
決して、「マスメディアが森氏の意図に反して勝手に『ゲーム脳』の恐怖をあおっている」わけではない。

マスメディアを悪者に仕立てて、それで終わってしまうのは間違いだ。
マスメディアを悪者に仕立てたところで、対策の立てようがなく、何ら問題が解決しないからだ。

マスメディア側(特にテレビ業界)から見れば、ゲームメーカーは有力なスポンサーである。だからゲーム業界の味方になるほうが、マスメディアにとっては利益になるのだ。
(例えば前述の『ニュースの森』では、「ゲーム脳」を取り上げてから30分と経たないうちに、『太鼓の達人』のCMが流れていた
そのマスメディアが、ゲームメーカーとの関係を悪くすることを承知の上で、森氏と結びついたのはなぜか?
国会議員の収賄問題や、大手企業の牛肉偽装問題。そういう事件を追及するのと同じ使命感が、マスメディア側にあったのではないだろうか?
テレビゲームの存在自体が不祥事と、認識されてしまったのだ。
そして、ゲーム業界が反論しない限り、この認識が変わることはない。

そもそも、思うに、
これまであったゲーム批判に対して、ゲーム業界が反論せず、無視し続けてきたことが、ゲームを嫌う人々を、増やしてきたのではないだろうか?
今回のような稚拙なバッシングは、むしろ偏見を拭い去る、またとないチャンスのはずなのだが。

森氏と『ゲーム脳の恐怖』自体に対してではなく、それを取り上げたマスメディアのみを非難するというのは、主犯を野放しにして実行犯を処罰せよと主張するようなものであり、はなはだナンセンスと言わざるをえない。

(※2003年7月16日加筆)
参考までに、『CESAネットユーザー調査報告書・第五集』から。
「少年犯罪が多発したときなど、「ゲームの悪影響」がよく報道されますが、そのことについてどう思われますか」という質問に対し、
「ゲームの影響は大きいと思う」と答えた人が、45.1%にのぼった。
(2002年11月9日〜20日、インターネットでの自記式アンケートによる。N=4,546人)
なお、ゲームユーザーが多数来場する東京ゲームショウ2002会場内における同じ調査では、
「ゲームの影響は大きいと思う」は16.4%だった。
この大幅な意識の違いが、ゲームファンや業界人の、危機感の薄さにつながっていると考えられる。


ジャーナリストが退けられる業界

もしこれが1、2年前だったら、『週刊ファミ通』にはこの手の話題を取り上げることのできる、連載記事がいくつかあった。だが残念ながら、相次いで連載が終了してしまった(そのかわり、浜村氏のコーナーが、そうした話題を引き受ける形になったといえる)。
また『電撃王』も、創刊当時はゲーム業界の諸問題について、かなり多くのページを割いて、特集記事にしていたものだが。

ゲーム雑誌の記事は、どうしても新作紹介と攻略が多数を占める。それはまあ当然としても、この2つ以外に記事がなく、ライターが自分の意見を表明できない雑誌がけっこう存在する。これは問題といえよう。
ゲーム業界ではこれまで、本当にゲームのことを考えられるジャーナリストが育ってこなかった、あるいは育った人材が、業界の第一線から退けられてきたのではないだろうか?
私ごときが乗り出さざるを得なかったこと自体、人材が枯渇した状況を露呈している。
(そもそも新作紹介と攻略だけで、ライバル誌とどうやって差をつけようと考えているのか、不思議である。事実、この2つしか内容のない雑誌は、ある時期にやたらと創刊され、やたらと休刊した)

『ゲーム批評』での新清士氏の記事や、今回の私の記事などが、ゲーム業界全体の「無視する」という態度ゆえに、業界内で正当な評価を得られないようであれば、次にもし、別のゲームバッシングが起こったときに、誰がゲーム業界を守るというのだろうか?

中国の戦国時代、墨子という人は、楚の国が宋の国を攻撃しようとしていたところを、命懸けの説得で思いとどまらせた。しかし宋の人々はそのことをまったく知らず、墨子が宋国内の門で雨宿りしていたら、門番に追い出されてしまったという。
誰しもこうはなりたくないだろう。

冒頭に、孫子の兵法の、「正々の旗をむかうることなく、堂々の陣を撃つことなし」という言葉を引いたが、その少し前に、こういう文章がある。
「善く兵を用うる者は、その鋭気を避けてその惰帰を撃つ」
孫子は決して、戦うなと言っているわけではない。相手の勢いを見て戦えと言っているのである。
増して、この戦いは戦争ではないのだから、人の命が奪われるわけではない。
「戦わずして敵の兵を屈するは善の善なる者なり」という言葉のとおり、武力ではない戦いをもって、敵を制するべきであろう。

今のゲーム界の状態はまるで、『三国志』で董卓が都に居座っていた頃の諸侯のようだ。
反董卓連合軍を組みながらも、みんな自分が矢面に立つのが嫌で動こうとせず、都で略奪を重ねる董卓に対し、何ら有効な対策を打てないでいた。
そのうち連合軍は内部分裂してしまう。
そんな諸侯を見かねて、単独で董卓軍に立ち向かう、曹操孟徳のような人物は現れないのだろうか?


追記
ゲームファンは、メディアリテラシー能力が、ほかの人より格段に優れているのではないかと思う。
何しろ、ゲーム雑誌の紹介記事を見て、そのゲームが良作かクソゲーかを、読み取らなくてはならないのだから。


87パーセントが“反論すべき”/2003年7月16日現在、いまだ鎮火せず
NHK出版の新聞広告/ゲームが売れないのも同じ理由
マスメディアを悪者扱いするな!/ジャーナリストが退けられる業界


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