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「ゲーム脳」徹底検証
日大医学部・泰羅助教授に聞く
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――でも一般に、この本は科学的だと信じてしまう人が結構多いのが事実なんですが。
泰羅 それはそうやって紹介したマスコミ側の責任ですよ。そこはマスコミがちゃんと、中身を吟味するもんじゃないですか?
――森氏の手を離れて、独り歩きしたという感じなんでしょうか?
泰羅 ゲームに関する話は、完全に独り歩きしてますよね。
例えば、教育関係者の中には、ゲームを目の敵にする人は多いわけじゃないですか。この本は、格好の題材になりますよね。
しかも、新聞社とか大手のマスメディアが、ポンとお墨付きみたいなものを与えちゃってますからね。
――学生さんの中にも、この本を見て、ゲームに対する印象が変わったという話は聞かないですか?
泰羅 聞いたことないですね。
非常に常識的に考えたら、何にもせずに長時間ゲームだけやってたら体に悪いってのは、当たり前の話ですよね。ゲームやったらその分だけ、また別な遊びするなり勉強するなり、バランスがないといけないわけで、ゲームだけやってりゃそれは体に悪い。
うちの学生はそんなしょっちゅうやり続けるのはいかんっていうのは、ある程度わかってると思いますよ。
――歯止めが効くかどうかと。特に低年齢の場合は。
泰羅 そうでしょうね。
――やっぱり、年齢が低いほど影響はありますか?
泰羅 いや、わかりません。そういう研究はないでしょう。
――本の中では、「もしも、テレビゲームをやらせるというのなら、せめて中学生以降、できれば大学生になってから」と書かれてますが。(※P157)
泰羅 それはでも、いろんな意味合いがあるでしょ? ゲームってのはアディクティブな(麻薬のような習慣性が強い)ところがあるから、そればっかしやってることによって、第三者とのかかわりがなくなってしまったら、コミュニケーションがとれなくなる可能性が考えられるし、そういう面においては、ある程度制限ってのは必要になってくるでしょう。
ただ、脳に対する影響だけ議論するんじゃなくて、多方面からの研究、例えば、社会心理学な研究も必要でしょうね。
――複数の人間でゲームをやっている場合は、また変わってきますか?
泰羅 そういう研究ってないでしょう。それはゲーム業界で研究すべき対象じゃないかと。
――アメリカで、子供の集中力を測定するのに、テレビゲームを使うことがあるそうです。集中力のない子は、ゲームも15分続かないそうで(※注4)。
泰羅 あー、それはきっとADHD(注意欠陥・多動性障害)ですね。ゲームを診断のために使ったっていうことじゃないですか?
――『ゲーム脳の恐怖』では、「テレビゲームや携帯型ゲームは、集中性を高めるということが信じられてきましたが、これは誤解です」と書かれてますけど……。(※P148)
泰羅 いや、アメリカの話も、読んでないので詳しくはわからないけど、今の話からすると、「ゲームをすると集中力が高まる」と言ってるわけじゃなくって、ゲームというのはある程度集中力が必要だから、ADHDの子はそれができないよ、と言ってるんじゃないですか?(※注5)
――集中力が必要なのは確かですか?
泰羅 そりゃ、集中力がなかったらできないでしょ(笑)。できるわけないと思うけど。
――それから、「脳波で脳の動きを診断する」という方法自体への疑問も指摘されていますが(※『ゲーム批評』11月号、新清士氏の指摘)、これについては?
泰羅 脳波はもう、いちばん昔から行われている手法で、いろいろと皆知り尽くしている手法でしょうね。一般的な受け止めかたとしては、脳波っていうのはやはり、グロス(全体的)なデータですね。
でもまあ、脳波は脳波で、それなりに、重要な意味を持っているんで、全然意味がないかといったらそんなことはなくて、意味がなかったら病院で検査なんかしませんし。
注4:『やわらかな脳のつくり方』(吉成真由美/新潮社)P155より
注5:『2002CESAゲーム白書』に、テレビゲームがADHDの治療に有効であるとする研究結果が取り上げられていました(NASAラングレーリサーチセンターのアラン・ポープ博士と、ノースキャロライナ州立大学チャペルヒル校医学部のオラクル・パルソン博士による)。
私もこの記事は読んでいましたが、ADHDをPTSD(心的外傷後ストレス障害)と勘違いして覚えてしまっていたため、インタビュー中に触れられませんでした。申しわけありません。
泰羅 けっこういろんなマスコミが、この話を追っかけてるみたいですね。昨日も1社来ていましたし。
――では、これからまだまだこの本に対する議論も、マスコミでかなり……
泰羅 出るでしょうけどね。でも、所詮は本は本、っていうのがあって終わりじゃないかって気がしますけどね。
――逆に、この本を読んでない人のほうが怖いかなという気も。(※注6)
泰羅 そうでしょうね。記事だけ見ちゃってそれで「そうか」って思う人は、非常に怖いですよね。
――やっぱりこれだけマスコミに出るようになると。
泰羅 脳波にしろ、イメージングの研究にしろ、「こういうゲームをやったら、脳がどういう風に働くか」というのは、はっきりした客観的な事実が出てくるわけですね。でも、それがどういう影響を持ってるかってのはそりゃあ、また違う次元ですからね。そこに関してはやっぱり、多方面のかたの、いろんな研究が必要ですよね。
この本だって結局、読む人が「ちょっと違うんじゃないか」と思うのは、データを見たときのその人の解釈でしょう? 逆に、本に書かれてるのも森先生の解釈であって。
そうすると、この森先生のデータに関して、ディスカッションというものが、当然必要になってくるでしょうね。
注6:前出の『ゲーム批評』11月号、新清士氏の見解を参考にしました。
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